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第88回原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会の開催について

令和5年10月17日
原子力損害賠償・廃炉等支援機構


本日、以下のとおり第88回運営委員会を開催いたしましたので、お知らせします。


日時:令和5年10月17日(火)13:00 ~ 15:00
場所:原子力損害賠償・廃炉等支援機構 A会議室
議事内容:
・東京電力による経営改革の取組等の検証 等


※後日、議事要旨を公表する予定となっております。

 

(以上)

第88回原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会 議事要旨


日時:令和5年10月17日(火)13:00 ~ 15:00
場所:原子力損害賠償・廃炉等支援機構 A会議室

議事要旨:
1.東京電力による経営改革の取組等の検証について
東京電力から、(1)第87回運営委員会での委員等からの質問に対する東京電力の回答と、(2)原子力事業及び(3)長い時間軸での年4,500億円規模の利益創出に向けた取組に関するヒアリングを実施した。

(1)第87回運営委員会での委員等からの質問に対する東京電力の回答
東京電力から、ジョブ型雇用の導入状況について、以下の説明があった。
・当社では、「仕事に人をつける」「仕事起点で考える」ことをジョブ型への転換と位置づけ、仕事起点での配置・育成を進めている。
・具体的には、全社大で、ジョブ・ディスクリプションの可視化や、経営リーダー人財の重要経営課題への配置など、戦略的な人財配置を進めている。その前提として、管理職については、職責・役割に応じた処遇・報酬を決定する仕組みとしている。
・これらの取組に加え、DX・システムセキュリティ、投資・M&A等の分野で、特に高度な専門性を持つ人財を対象に、市場水準に基づく処遇で採用する仕組みも設けており、数名の採用実績がある。

運営委員等から、以下の意見があった。
・DX人材に大規模な投資をしている企業の事例が多くある中で、東京電力はDXの高度人材の採用が数名程度とのことで、取組の規模があまりにも小さいように思う。これでDXを活用して利益を伸ばすと言えるのか疑問。

東京電力から、以下の回答があった。
・先に説明した事例は、DX・セキュリティ分野で非常に高度な最先端の技術を要する役割・職務を担う人財について、特に市場水準に沿った水準で雇用するもの。DX業務を行う人財は、外部からの採用者に限らず、社内でのリスキリングを通じて育成・選抜し、専門職として配置している。

運営委員等から、以下の意見があった。
・社内での人財育成は必須のことであり、他の会社も取り組んでいる。DXで稼ぐというのであれば、他社と同じレベルではなく、突き抜けるレベルで取り組んで、それを資本市場にも伝えていくべき。

(2)原子力事業について
 東京電力から、以下の説明があった。
・核物質防護に係る事案について、その根本原因として、「リスク認識の弱さ」「現場実態の把握の弱さ」「組織として是正する力の弱さ」があると考えており、これは過去から至近までのトラブル・不適切事案にも共通して当てはまるものであると認識。
・引き続き、追加検査・適格性再確認に真摯に取り組むとともに、核物質防護事案に関する改善措置の実施や、セキュリティ強化の取組からの気付き等を踏まえた保安規定における原子力事業者としての基本姿勢の見直し、社長の強いリーダーシップの下でのPDCAの確立、これを補佐する核物質防護モニタリング室の新設等を進めている。
・その上で、地元・地域への貢献、防災支援を継続するとともに、行動と実績を積み重ね、信頼回復につなげていく。

運営委員等から、以下の意見があった。
・社員の意識をどのように変えていくのかという大変難しい部分に取り組んでいるものと理解。核物質防護モニタリング室の新設について説明があったが、こうした一つの事に集中して取り組む部署を置くというのは効果的だと考えている。
・また、コミュニケーションの活性化、特にトラブル等が確実に上司や経営層に報告がなされるようにすることは極めて重要。発電所内には東京電力の社員だけではなく、協力会社の方も多くいるので、発電所内全体でコミュケーションが良くなるよう取り組んでもらいたい。
・原子力規制委員会の指摘への対応やトラブル・不適切事案への対応などについて、形から入ってしまうと本質が分からなくなり、現場は「形だけやっていれば良い」という意識を持ってしまう可能性もある。社員が意味を理解して対策に取り組めるよう工夫してもらいたい。

(3)長い時間軸での年4,500億円規模の利益創出に向けた取組について
 東京電力から、以下の説明があった。
・年4,500億円規模の利益を実現するためには、更なる利益拡大が必要であるが、外部環境変化への対応や資金調達面の課題の克服が必要。
・卸売の内外無差別化の進展等を踏まえ、事業ポートフォリオの再構成や、カーボンニュートラルを推進するための設備サービス事業へのリソースの重点配分などを通じ、事業リスク低減と新規収益源確保を図る。
・利益拡大に向けた投資が必要である一方で、原子力や送配電事業など既存事業の設備投資も今後増加する見込み。追加資金調達が容易ではない中で、投資の精査を行うとともに、包括的なアライアンスに取り組む必要がある。
・JERA以降も、包括的アライアンスの実現に向けて、様々なパートナーと交渉を進めてきたが未だ結果が得られていない。アライアンスの成立にはパートナーとの補完関係構築や福島責任や原子力事業のリスクに対するパートナーの理解や目的意識の共有などが必要であると考えており、これまでの交渉での気づきも踏まえながら引き続き、交渉を進めていきたい。
・加えて、収支の安定化及び新たな収益機会の獲得を図るため、個別課題として小売事業の構造変革などの対応を行う。

運営委員等から、以下の意見・質問があった。
・包括的アライアンスがJERA以降進んでいないが、福島責任・原子力事業リスク以外にも、重要な局面で不適切事案が発生するといった東京電力への信頼の低さも影響を与えているのではないか。また、この包括的アライアンスに対する福島責任・原子力事業リスクの影響緩和については、国とともに対策を検討してもらいたい。
・包括的アライアンスについて、JERA以降の成功事例がないのは熱意に欠けているのではないか。東京電力のコア事業は電気事業であり、異業種だけではなく、電気事業の中でどのようなアライアンスを組むことができるかについて、検討する必要がある。
・包括的アライアンスを実現するには、社長同士で突っ込んだ議論をするなど、踏み込んだ形で交渉を進めていくべき。
・個別の事業ではアライアンスの実現例が出ているが、今後のアライアンスの方向性はどのように考えているのか。
・東京電力がパートナーとアライアンスを組む上で、東京電力が有する強みは何だと認識しているか。
・東京電力が目指すべき企業価値の目標と、足元の企業価値の差はかなり大きい。PERが低迷する中で、どういった投資家が東京電力の株を買っているのか。
・賠償・廃炉に年5,000億円の資金を確保した上で、年4,500億円規模の利益を上げるのは非常に挑戦的なことである。一方で、電力市場自体は、デジタル化で電力需要が伸びたとしても、それほど大きく市場が拡大するというものではなく、カーボンニュートラル化についても、電源が入れ替わるだけだという見方もできる。こうした中で、電気事業を基礎とする企業がどのように年4,500億円規模の利益を稼ぐのか。
・カーボンニュートラル化の中で、利益のボリュームを確保する上では、原子力事業が会社の根幹になると理解。柏崎刈羽原子力発電所、そして長期的には東通原子力発電所をどのように進めていくのか、国・機構も一緒に検討してもらいたい。
・温室効果ガス排出量に係る開示義務が厳しくなる中で、電力会社がカーボンニュートラル化することは、電気を購入する企業にとってのベネフィットは非常に大きい。小売事業(EP)への引き合いも大きいのではないか。

東京電力から、以下の回答があった。
・包括的アライアンスがJERA以降実現できていない点については、福島責任・原子力事業リスク以外にも、東京電力の信頼・ブランドに問題があるのではないかという指摘は重く受け止め、ステークホルダーの信頼を獲得していきたい。
・東京電力の強みとしては、エネルギー・バリューチェーン全体を持っていることであり、設備を設計して運営してメンテナンスするところまでを一貫して行うことができること。また、海外のパートナーからは、日本最大の電気事業者であり、非常に多くの消費者と直接つながり、巨大なデータを持っていることも価値として評価されている。
・電力市場自体が大きく拡大する訳ではないので、利益を増加させるためには、水平的に規模を拡大するか、垂直的に需要家へのリーチを広げるしかない。前者は、JERAのような統合。後者は、需要家に電気を届けるだけではなく、需要家がカーボンニュートラル化を実現するために必要な設備サービスを提供する事業の拡大。アライアンスは前者の水平的な規模拡大だけではなく、後者のような異業種との組み合わせに効果を生むものもあるので、両面で取り組んでいきたい。
・需要家のカーボンニュートラル化に関して、カーボンニュートラル宣言をする企業も増えているが、どのようにロードマップを書けばよいかが分からないという企業もあるが、各企業のニーズに応じ、顧客と一緒に対策を考え、提案できるのが東京電力の強みであるので、その点で引き合いは強い。
・投資家からの評価については、震災前と比較すると個人投資家が増えている。海外の機関投資家からは、原子力事業に係るリスクが解消できれば関心があるとの声もあるので、投資家が当社に関心を持ち、株価として評価できる状況を作ってまいりたい。
・原子力事業については、基礎的な利益を稼いでいく上でも、安定供給を確保する上でも重要。通常の投資は20年程度で回収するものが多いが、原子力事業は回収期間が非常に長い。当社として今後の進め方をしっかり議論したい。

次回は、提言の取りまとめ案について審議する予定。

(以上)

第88回原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会 参考資料