トップページ>賠償支援>運営委員会運営委員会議事次第>第59回委員会 議事次第 議事要旨

第59回原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会の開催について

平成29年4月10日
原子力損害賠償・廃炉等支援機構


本日、以下のとおり第59回運営委員会を開催いたしましたので、お知らせします。


日時:平成29年4月10日(月)9:30~11:30

場所:原子力損害賠償・廃炉等支援機構 大会議室

議事内容:
  • 責任と競争に関する経営評価について
  • 新々総合特別事業計画について


※後日、議事要旨を公表する予定となっております。


(以上)


第59回原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会 議事要旨


日時:平成29年4月10日(月)9:30~11:30
場所:原子力損害賠償・廃炉等支援機構 大会議室

議事要旨:
1.新々総合特別事業計画について
 東京電力より、新々総合特別事業計画の総論及び廃炉パートについて、以下のとおり説明があった。
○総論には、これまでの取組として、JERAの設立やコストカットの進展等で一定の成果を上げる一方、需要減や競争の激化により市場の縮小が想定されること、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が遅延していること等から恒常的な収支改善にいたっていないこと等を記載する予定。
○また、昨年7月には「激変する環境下における経営方針」を公表するとともに、12月に公表された東電改革提言では、確保すべき資金の総額が約22兆円と見込まれることに加え、賠償・廃炉に係る資金の確保と長期的な企業価値向上を実現していくための改革の方向性が示されており、こういった経緯を記載する予定。
○東電として、福島への責任を果たしていくという使命を肝に命じ、グループ一丸となって非連続の経営改革に取り組むこと、共同事業体を早期に設立し、再編・統合を目指すことで企業価値を向上させていくことを理念、基本方針としたい。
〇改革の道筋として、生産性向上の取組を進めて更なるコスト削減を着実に進め、さらに信頼回復の上で原子力の再稼働を実現し、燃料・火力や小売において企業価値を向上させる。また、送配電・原子力においてはJERAの事例に倣いまして共同事業体を設立する等、大胆な改革を実行し企業価値向上の達成を目指していく。
〇経済事業について、委員からのご指摘を踏まえ、外部環境認識について記載を追加するとともに、共同事業体の設立に向けた条件や、他社と共同で行っていく取組の記載を一部具体化している。
〇廃炉のパートについては、基本的な考え方、廃炉の実施状況、今後取り組むべき課題、積立金制度に基づく廃炉の推進の4つに分けて記載。
〇リスク低減の考え方に基づき安全確保最優先に廃炉事業に取り組んできた。汚染水対策、使用済燃料プールからの燃料取り出しが進展し、緊急的に取り組まざるを得ない状態から、先々を見越して戦略的に進んでいく状態に移りつつある。
〇廃炉の実施状況については、原子炉での発熱は十分に小さく、冷温停止を維持しており、発電所周辺の放射性物質の濃度は自然の放射性物質濃度とほぼ同程度にまで低減。
〇設計上の不適合が繰り返し発生したことも踏まえ、エンジニアリング能力を向上させるとともに、適切な情報発信を通じた地元・社会からの信頼を回復することが、今後取り組むべき課題。
〇東電HDとしては、安全意識を現場第一線まで徹底する現場ガバナンスなどを具備したプロジェクト管理能力を一層強化していくことが必要であり、情報発信についても、正確性と透明性を大前提とし風評を招かないように配慮しコミュニケーションを行っていく。

 運営委員からの主な意見は以下の通り。
○新々総合特別事業計画は全体的にコンパクトにまとまっており読みやすいが、策定趣旨についてはもう少し記載する余地があると思われる。
○復配については、株価形成の重要な要素であり、将来的には収支計画に反映させるとともに、対外的にも説明していく必要がある。
○廃炉について、設計上の不適合事象が生じたことに触れているがこれにより放射性物質が放出されていないことを明記した方が、誤解を招かなくて済む。また、風評被害については、基本的な考え方など、もう少し踏み込んだ記載にして欲しい。
○アメリカでは廃炉に係る施設を国立公園にしているような例もある。福島でも、何らかの地元の復興に絡めた活動があっても良い。
○廃炉については、燃料デブリなど、これまで以上に難しい事業となり、社会の監視の下で実施していかなくてはならない。東電社員全体の更なる意識改革が必要であり、そのためには、トップのリーダーシップを現場まで貫徹することが大切。それをベースに、技術力、プロジェクトマネジメント機能、コミュニケーション能力を一層強化していくべき。
○廃炉については、現場状況が変化したときに新しい事象が起きることは当然。トライ&エラーをしながらも、環境汚染のような大きな問題につながらないよう対処していることを記載すべき。また、廃炉の実施状況には「一定の進捗」とあるが、より具体的に記載にすべき。

2.経営評価及び新々総合特別事業計画について
 機構事務局より、経営評価の検討状況及び新々総合特別事業計画の冒頭に記載すべきポイントについて、以下の通り、説明があった。
○経営評価については、2014年に策定した新・総特において2016年度末に経営評価を行うこととなっており、2014年度及び2015年度には中間レビューを行っている。基準としてはグループコミットメント、部門別コミットメントを作成しており、一方で必要資金規模の増大等、大きな環境変化も行っているため、こういった基準や背景を勘案して最終的な結論を得ることとしたい。
○全体として、賠償・復興については個人への賠償支払いや復興推進活動への貢献、廃炉・原子力安全については4号機からの使用済み燃料の取出し、陸側遮水壁の凍結、競争・連携については、生産性倍増、HDカンパニー制の導入、JERAの設立・推進、社債発行の実現等、一定の成果をあげたと認められる。
○一方で、賠償・復興については農林業の風評賠償の在り方の検討、廃炉についてはプロジェクト管理機能の強化や運営体制の見直し、原子力安全についてはメルトダウンとか免震重要棟について信頼回復に向けた情報発信等がいまだ不十分。競争・連携については、当時5兆円の株式価値目標に対しての収支水準、託送業務システムの電気使用量の通知遅延に対する対応、社債市場に対する東電単体としての信用力の回復、こういった点に課題が残っている。
○結論としては、上記の評価、環境変化を勘案して、東電経営への国の継続的関与が必要と判断し、2分の1超の東電議決権の保有及び機構役職員の派遣の双方について、現行のとおり継続することとしてはどうか。
○新々総合特別事業計画に記載すべきポイントとしては、まずは東電が福島事故対応のために存続を許されたという事は今後も不変であり、今後は特に、廃炉事業の完遂、賠償の費用の償還原資の回収、これを東電がどう準備していくのかが焦点となる。
○新々総合特別事業計画の枠組みとしては、賠償・復興には引き続き全力で当たると、廃炉については先々を見据えたリスク低減という基本思想があり、同時に、事業推進体制の確立と財源確保を行っていく必要がある。
○他方でその他の電気事業については、公的資本・公的資金を早期に回収することを念頭に置くべき段階であり、ミッションは不変だがフェーズが変わってきており、そのため、再編・統合に取り組まなければならない。
○次の収益改善については、まず賠償・廃炉費用に関して年間5,000億円を負担するということ、これに加えて除染費用相当の企業価値を創出する為に4,500億円規模の経常利益の創出というのが必要。このため、生産性改革で年平均2,000億円近い改善を行うとともに、安全確保を大前提に地元の理解を得て柏崎刈羽原子力発電所を再稼働していく。
○上記に加えて、送配電とか原子力分野における共同事業体の設立を通じた再編を行っていくということで本格的な再編・統合を行っていくことを目標として設定する。潜在的なパートナーの理解を得るため、東電の出資比率は柔軟なものとするとともに、共同事業体が市場から信任され財務・経営の自律性が持続的に確保できるような以下のような措置を講ずる。
○共同事業体設立に向けたプロセスとしては、ステップバイステップで進めるものの早急に潜在的なパートナーの意見を聞くプロセスを行い、その意見を聞いた上で、東電、機構、国の方で具体的な進め方について、今秋めどで決めていく。
○他のステークホルダーの協力については、東電の改革の取組について、金融機関の後押しを求めるとともに、株主については無配の継続等を求めていく。
○国の関与と公的資本回収については、機構はモニタリングを継続し、その結果を踏まえた上で、国と連携して2019年度末にそれ以降の関与の在り方を検討する。公的資本及び公的資金の回収可能性を勘案しつつ、できるだけ早期に公的資本の回収を図っていく。この際、その手法は東電HD株の売却のみに手法を限定せず、東電が共同事業体に対して保有する持ち分の取扱いも含め幅広く検討する。
○最後に、必要な環境整備として、廃炉の積立金制度の制度整備と、原子力・送配電の事業の将来的な方向性も踏まえた制度整備をあげている。

 運営委員からの主な意見は以下の通り。
〇2016経営評価結果(特に進捗が十分ではない項目)については、誤解を与えないよう、項目だけでない分かりやすい記述とすべき。
○新々総特で求められることが実現できるハードルは容易なもの ではない。利益水準など、生半可な取組では到達できる水準ではないことを、分かるように記載しておくべき。
○新々・総合特別事業計画の本文には、骨子のエスプリを、有機的な連関をもって具体的に記載すべき。また、計画全体を貫くトーンは、公的資金の援助に値するような真摯な改革に取り組むというものになっていなければならない。
○原子力安全について、記載が弱く、もっと深掘りすべき。計画本文や経営評価にも、メルトダウンや免震重要棟の事例などで「信頼回復ができていない」と書いてあるが、これはそもそも「中身ができている」ことが前提。実際は、それ以前の段階であり、意識の問題以前に、まず技術力の向上が必要。
○廃炉については、未踏領域とあるように、「対策できるかも含めて、よく分かっていない」。このため、技術力は一層大切であるが、検討や体制について、総括ができていない状況。コアは技術であり、もっとその点を強調した記載ぶりとすべき。
○技術力だけでなく、マネジメント能力も大切。リスクの全体像を把握した上で、プライオリティを付けながら実施する能力と、しっかり説明していく能力が重要。そこをうまく書いて欲しい。
○廃炉をどういう作業と認識するかが重要。そもそも廃炉は「事故が起きなければやらなくて良かった」もの。その認識の共有がないまま、ただ一生懸命やったことを書いても、理解は得られないのではないか。
○本計画は1F事故への東京電力の対応として書かれているが、東京電力が抱える様々な問題は他の電力会社にも共通している点があるように感じる。東京電力に限らず、特に原子力事業については事業全体の環境整備についての問題提起があってもいいのではないか。
○事業体設立については、配当ルールの策定のみならず、原子力への債務リスクからの隔離が重要であり、その旨の記載が必要ではないか。また、財務リスクのみならず、政治・政策リスクについても他の事業者が気にしていることから、考慮に入れる必要がある。
○今後の海外投資方針と将来の回収見込みについての考え方についても、ハイリスク・ハイリターンではあるものの、書き込んだ方が良いのではないか。



(以上)